輝クロニクル第3期第三章(最終章)ご案内

2024年1月より3期に分けて開催しておりました、池田輝の画業を辿りご紹介する「輝クロニクル展」、いよいよ最終回となります。

最終の第3期は、53歳で退職した後の画業への取り組みが充実し、変遷が著しいことからその20年間を3つの章に分けてご紹介してまいりました。

今回展示・ご紹介するのは、66歳から筆を置くまでの73歳までの作品です。

これからは人物を極めたいと語り、人の強さも弱さも、そして時代をも受け止めた人が生きる姿を描いています。

病に倒れた後は外出の機会が減り、室内での制作が中心となりました。

自由に動かない体で、一筆一筆作品を仕上げました。

72歳から入退院を繰り返しながら制作したのが、未完の作となった「座す女」です。

アトリエに入り、絵をじっくり眺め、一筆を置く。

1日に一筆しか置けない日もありました。

そうしてゆっくり制作は進みましたが、病が進行し、ついに筆を置く決断をしました。

この制作の様子を地元ケーブルテレビがドキュメンタリーとして記録に残しました。

父の様子を見ていた母から聞きました。

父は、じっと絵を見つめ、親指に赤い絵の具を乗せ、ギュッと「女」の鼻に押し当てると、

「これでおしまい」と言ったそうです。

ある日父は私に電話してきてこう言いました。

「もうこれ以上制作するのは無理だから、制作を終わりにすると(撮影スタッフに)言う。」

絶筆宣言です。

電話ですから父の表情は見て取れませんでした。

それだけに、父の無念の重いが私の心に重くのしかかりました。

母は、「お父さんは諦めがいい人だから」といつも言っていましたが、果たして諦め、受け止めていたのか。

そののちしばらくして、制作を記録するカメラに向かい、父が残した言葉は、

「丁度50年、もう思う存分やりたいことをやってきて幸せだったです。」

父は病に倒れた後、いつになくまじめな顔で私に詰め寄ったことがあります。

「俺の絵はどうするだ。焚きつけにでもするだか」

この言葉が今もズシリと私にのしかかります。

73歳で制作を断念する、その事実を受け止めた父の思いが「無念」であるなら、私が今すべきことは父の作品を世に出すことです。

倉庫にしまい続けるのではなく、ギャラリー輝で作品を紹介し多くの方に観てもらうことで、池田輝の制作が完成するのです。

私がそう少し年齢を重ねれば、父の思いに違った解釈ができるかもしれません。

最終章展では、病に倒れる前の人物を極めていた作品「意気」の他、大作7点を展示します。

小展示室では「座す女」に合わせて、制作を追ったドキュメンタリー映像を放映いたします。

父が最期の制作に向かう姿、生の声が放映されます。

作品と合わせてご鑑賞いただければ幸いです。

■「輝クロニクル第3期第三章展」

 期 間:2025年10月25日~12月21日 開館は期間中の土日のみ

     今回最終章は、より多くの方にご鑑賞いただきたく、

     当初の予定を1週間延長いたしました。

     また、土日以外の平日もできるだけ開館する予定です。

     開館する平日については、随時Webサイト、SNSでお知らせいたします。

 時 間:10:00~16:00

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